自分たちがネットでみている土地の情報はほんの一部でしかない。
町の不動産屋やモデルハウスに行って話を聞くたび、正紀と静香はそう感じた。土地と道路に高低差があると余分な費用がかかったり、一見学校から遠く見えても見守りの人たちがいてくれるから安心だったりなど、実際に見て聞いてから知る情報が数多くある。
土地のことばかり考えていたが、家族が住むのは土地の上に建つ家なのだ。そう思うと、自ずと優先順位も決まってくる。
予算と大きさを軸に土地選びを進めていけば、きっと大丈夫だ。土地の形や周辺環境に対する不安や疑問は、「幸せになるためのお手伝いをしますから」と言ってくれた担当者であれば解決してくれるだろう。
「こうして実際に土地探しをしてみると、どうしてもっと早くに問い合わせてみなかったんだろうって不思議になるね」
「営業されるかも、という気構えがあったのかも。断る権利も当然あるのに不思議なものだなぁ」
それにしても、ハウスメーカーの担当者の経験と知識の豊富さに驚かされた。
何もない更地を前に、「ここが玄関。廊下を通るとここがLDKに。リビングはこれくらいの広さになりますね」と、イメージしやすい間取り図を体の動作で描いてみせたのだ。
「ビビッときたら決める。それも一理ありだ」
「感覚に頼るのも大事だね」
一年後、「行ってきます!」と笑顔で元気に家を出る隼人の姿を想像しながら、受話器を取った。
※このお話は一般的に寄せられる家づくりへの想いや悩みを物語風にアレンジしたものです。実在の人物や団体などとは関係ありません。